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2005-06-05 No.132
Hello World! 世 界 旅 行 と き ど き 日 記
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世界旅行出発から 942 日
現在地: イラン マシュハド
アフガニスタンの恋
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The Day 938 - 2005-06-01 Wed 22:07 Herat, Afghanistan
… Sinead O'Connor - Secret Love
「僕の秘密を教えよう」
毎日通っているレストランに英語の上手な若者がいる。彼はいつも、何かしら
僕や日本について、習慣、物価、仕事、男女の話、宗教や神の存在を信じるか
など、僕にとっても興味深い質問を用意して待っている。
彼の名はマスード、22歳。彼はアフガン難民の子としてイランで生まれ育ち、
大学まで進んだ。イラン政府がアフガン難民に対して不当に授業料を吊り上げ
たために勉強ができなくなり、母国の大学へ編入するためにアフガニスタンへ
やってきた。しかし、この国の大学の現状は期待に沿うようなものではなく、
この先どうするかを考えながら、ヘラートにあるレストランでアルバイトをし
ているという。
本当は家族の住むイランへ戻りたいが、アフガニスタンのパスポートを発行し
てもらえず、帰ることもできなくなり、八方塞なのだという。パスポートその
ものの在庫がなくなってしまい、発行しようにもできないのだという。いつ新
しいパスポートが刷り上るのかもわからない。
彼は難民であり、イラン国民ではないため、イランのパスポートを持つ資格も
なく、片道の出国許可証だけを持ってアフガニスタンへやってきたらしい。
ある日彼は僕のテーブルの反対側に腰掛けて、冒頭の言葉でこう切り出した。
「僕の秘密を教えよう」
1カ月半ほど前、彼はマザーリシャリフの親戚の家を訪ねた。親戚の家族は彼
を暖かく迎えて、もてなしてくれた。そこには一人の娘がいた、再従姉妹に当
たるという。その子が10歳の時に一度会ったことがあるが、今回久しぶりに再
会したのだという。
アフガニスタンでは、女性は完全に顔まで隠したチャドリという服を着ている。
目の部分だけメッシュの窓がついていて、彼女達はその窓を通して外の世界を
見ている。女性に話しかけることは許されない。この国には恋愛どころか、出
会いさえもないのだ。
高校生までは男女別々の教室で勉強するが、大学になると一緒になる。そのた
め大学では少しばかりの出会いがあるが、運良くデートまで発展しても、一緒
に並んで歩くなどは犯罪行為に等しく、わざと離れて他人の振りをして公園を
散歩するのが精一杯だという。
手を握る事も、キスさえもできない。結婚前の性行為など絶対にあり得ないし、
処女でなければ結婚はできないのだという。僕が驚いて、日本では性行為なし
に結婚なんて考えられないと話すと、彼は目を丸くした。
話を戻そう、彼の秘密の話だ。親戚の娘は立派な大人の女性になっていた。し
かし、いかに親戚だとはいえ、そうそう大っぴらに会話ができるというわけで
もないらしい。
そもそもマスードは、母親と妹以外、女性とまともに話などしたことはないは
ずだ。そして相手も同じだろう、家族以外の男性から完全に隔離された世界で
生きているのだ。
彼らはお互い惹かれあっているのを感じた、少なくともマスードは彼女に恋を
した。そしてある日、彼は意を決して手紙を書いた。
「君に惚れている、君も僕が好きなことはわかる。結婚したい、僕が仕事を持
ち、結婚の準備ができるまで待っていて欲しい」
親類同士が結婚することは何も珍しいことではないらしい。マスードには親同
士が進めている、従姉妹との縁談話があるという。
2日経っても、3日経っても返事が来ない。マスードは彼女に詰め寄り、なぜ返
事をくれないのかと問い質すと、親に知れては大変なことになってしまう、返
事はできませんと返ってきた。
しかしマスードは強気だった。ならばもう、君の事は金輪際忘れてしまう、も
う考えもしない。逆にそう撥ね付けると、彼女の方が折れた。
そうして彼らは恋に落ちた。
しかし、だからと言って仲良く話をできるわけでも、回りが気を利かせて、若
者たちを2人きりにしてくれるわけでもない。逆に独身の2人が、とんだ事にな
りはしないかと監視されてもおかしくない社会だ。
彼らは親の目を盗んで手紙を交換した。2人きりになるわずかな瞬間に、サッ
と手紙を受け渡しして、お互いの恋心を深めたという。まるで授業中に教師の
目を盗んでメモを渡す小学生と同じだ。マスードはその話をしながら、心躍る
素晴らしい時間だったと話してくれた。
今は遠く離れてしまった。マスードは彼女の声を聞くために、時々親戚の家へ
電話するのだという。電話口に出た彼女が電話を取り次ぐまで、ほんの一言か
二言、その声を聞くためだという。
イスラムの教えこそがすべてである世界で生きる若者達。彼らの青春のほんの
一瞬を垣間見た気がした。
加倉大輔 info@kakura.jp
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