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グアテマラのチキンバスでスリを捕まえた 2/3 帰国決定

グアテマラのチキンバスでスリを捕まえた 3/3

The Day 2095 - 2008-08-01 Fri 22:50 Antigua, Guatemala… B.B. King - There Must Be A Better World Somewhere

アンティグアの滞在も二カ月が過ぎた。そろそろビザも切れるし、出発しなければならない。僕が出発を決意する一番の理由は、ビザ切れだ。つまり半強制退去。

出発の前に、忘れてはならない大事な用事がある。スリを捕まえた時に、証拠品として提出した財布を返してもらわねばならない。裁判の日に観光局の通訳が迎えに来ず、そのまま梨のつぶてになっている一件。わずかな期待を抱いて連絡を待っていたが、結局何も進展はなかった。

連日警察署へ行き通訳の姿を探すが、事務所には誰もいない。もらった名刺に書いてある電話番号は通じないし、メールは不達で戻ってくる、連絡手段がない。来週には出発したいので、これ以上は待てない。僕は警察官に詰め寄り、他の通訳を呼び出してもらった。

現われたのは、僕が探している通訳の部下だという若い男。彼の話によると、例の通訳の男性は昇進して、もうアンティグアにはいないらしい。僕に連絡すると言い残したまま、裁判の件はほったらかして他所へ行ってしまったのだ。

今となっては、それはどうでもいい。僕は財布を返して欲しいだけだ。新しい通訳に連れられて、二カ月前に訪れた検察官の事務所へ向かった。

見覚えのある検察官がいた。若い通訳が財布の返還要求を伝えると、検察官はこう質問してきた。「財布を返してしまうと、この件は打ち切りになるが、それでいいのか?」

「僕ができることはすべて協力した、事が何も進まない以上、もう僕にできることはありません」 僕はそう答えた。そしてそれに対する返事は、なにもなかった。

担当が不在だというので、後でもう一度出直すことになった。そして午後、若い通訳は約束の時間に遅れて現われた。すべてがこうだから、何もうまくいかないのではなかろうか。遅れてきた通訳と、先ほどの検察官と一緒に、今度は裁判所へ向った。

現行犯逮捕した犯人を釈放した、いつぞやの裁判官がいた。財布を返して欲しいと同じことを伝える。そしてやはり、同じ問答が繰り返された。財布を返すとこの一件は終了してしまうが…。

そして僕も同じことを答える。「二カ月も経ちましたが、何の進展もありません。もう出発しなければいけないので、今日中に財布を返してください」

裁判官は、今日中という僕の言葉に反応した。返して欲しいのなら、なぜもっと早く言わないのか、来週までかかると言い出した。

「いいえ、今日中です、僕は二カ月も待ったんです」 two months をことさら強く発音して、僕はにべもなく反論した。本当は絶対に今日中である必要などない、しかし、通訳と検察官と裁判官、全員が揃っている今を逃したら、次はまた二カ月後になりかねない。

裁判官の承諾をもらい、検察官の事務所へ引き返した。そして、証拠品返還のための書類が作られ、僕の財布が入っている、密封された封筒が開けられた。

そしてまた、新たな呆れ返る事実が発覚した。

なんと封筒の中には、紛失したはずの犯人から押収したカミソリの刃が入っていた。それを見た瞬間、僕はおもわず声を荒げた。カミソリの刃が紛失したと僕に伝えたのは、他ならぬこの検察官本人なのだ。

しかも検察官は、そのカミソリの刃をつまみ上げると、何ごともなかったかのように封筒へ戻した。一体どういうことだ。

声を荒げる僕を無視して、検察官は書類を突き出し、財布を返すからサインをしろという。そして僕はまた驚いた。財布に入っていた現金が、きれいさっぱりなくなっている。わずか1ドル程度のお金だが、警察に証拠品として提出したものが、なくなっているのだ。

検察官は、そんなものは知らないと言うだけ。カミソリの刃のことも、知らないと言うだけ。怒鳴り付ける僕の言葉を、若い通訳はわけもわからず検察官に伝えている。

もう誰も、何も、信用できない。警察官、検察官、裁判官、みんなして茶番劇を演じ、仕事のようなものをそれらしく演じているのだ。そして一人笑っているのは、今日もどこかで熱心に仕事をしている、スリの男だ。

僕は受け取りの書類にサインを書きなぐった。人生で一番汚ないサインだった。検察官と通訳の話はまだ続いていたが、僕は、もうこれ以上時間を無駄にしたくないと言い残して、事務所を出た。そのまま表へ出て、通訳を待たずに宿まで歩いて帰ることにした。

誰が嘘をついたのか、誰が金を盗んだのか、今となっては何もわからないし、どうすることもできない。それにもう、どうでもいい。今日はこれだけのために、午前中から夕方までかかった。僕のイライラは頂点に逹し、堪忍袋の緒は最後の最後で切れてしまった。

宿へ向かって歩く足が、怒りのために段々速くなる。15年以上も使ってきた財布。僕は久しぶりに戻ってきたその空っぽの財布を、怒りと一緒にポケットにねじ込んだ。

加倉大輔2008-08-01 Fri 22:50 TrackBack
この記事の感想

日本人ってそう思うと、だいぶ人間らしいですよね・・・

shimitoshi552008-08-07 Thu 10:45

こんにちは、大変なことになっていたんですね。体になにも怪我がなくてよかったと思う反面、どうしてそんなことをするんだろう、と怒りがこみ上げてきます。裁判所のやり方も警察の対応も検察の態度も全てが適当で信頼性がなくて、理不尽に感じます。でも、アチラの方にとってその理不尽な態度はおかしくないという認識なんでしょうね。そもそも、理不尽とか信用できないとか、そんな概念あるんでしょうか?それが当たり前というキモチで生活しているように感じます。そういう人たちから日本を見たら、どういう風に映るんでしょうね。きっ
と「働きすぎ、勤勉すぎる」といわれるんでしょうね。正義って一体なんなんでしょうか。生活のためお金のため、いろんな理由があってそういう悪事を働いているんでしょうけど、おかしいことはおかしい。犯罪は犯罪。そう思います。この話読んで、どこにいっても多数決の世界なのかと思いました。大人数の意見が正しいという考えになるんでしょうか?いろいろ考えさせられる話でした。これからも気をつけて旅をお続けください。choro

choro2008-08-07 Thu 23:52

ヒドイ話です。
ただの話で終わればよかったのですが、これが現実とは・・・・・・。

日本の安寧秩序が染みます。

ちぇろ2008-08-08 Fri 22:18

もう6年目ですね。。。
危険な地域の旅、気をつけてください。
(久しぶりに覗いてみたらダブルで危険な目に遭っていたのでびっくりですよぉ。)

よい旅を!!
beijingより旅の成功と安全を祈っています!!

azuma2008-08-22 Fri 12:19

日本の警察は、かなり悪どいですよ。
逆らうとすぐ逮捕です。時代は変わっていますから。

koro2008-09-05 Fri 06:39

どうにもならないと思いつつついつい日本人のお人よしで人に期待してしまうよね。どうにもならないのに。Never Mindの精神で乗り切るしかない!

まみちん2008-10-14 Tue 15:52
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