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コスタリカ国立劇場の警備員

The Day 2021 - 2008-05-19 Mon 19:26 San Jose, Costa Rica… Billy Joel - Shameless
国立劇場のロビー
国立劇場の客席

コスタリカの首都、サンホセ。大きなビルはほとんど無く、本当に首都なのか疑わしいほどの小さな町。

中心地にある国立劇場が唯一の見どころ。クラシック音楽でも聴いてみようかと行ってみた。

ロビーでうろうろしていると、通路の入口に立っていた警備員が話しかけてきた。男はスーツに身を包み、流暢な英語を話した。

今夜、公演の予定はあるかどうか訊いてみると、あいにく何もないという。ならば劇場内だけでも見てみようと、見学用のチケットを購入すべく、窓口へ足を向けた。

すると、スーツの男が僕たちを呼び止めた。今、チケットを発行するシステムが停止しているので、このまま入ってくださいと言う。僕らは指示に従い、入場した。

この国立劇場は、パリのオペラ座を手掛けた職人たちを呼び寄せて建てられ、120年の歴史があるという。入場料が5ドル (520円) もする割には、ずいぶん狭くてがっかりするが、そこにはやはり長い時間の経過という重厚感がある。

コスタリカ人が戦争をしないのは、この劇場のガラスを割りたくないから、とまで言われている。国民はこの劇場を誇りに思っているらしい。

劇場内をひと回りして、二階席の椅子に腰掛けて写真を撮っていると、先ほどのスーツの男がやってきた。チケットを持ってきたから、料金を払ってくれという。

なるほど、そういうことか。この男は僕らをチケット無しで入場させ、直接料金を徴収することによって、その金を着服するのだ。

男が持ってきたチケットらしきものは、すでに半券になった状態で、日付もなければ、金額も印刷されていない。はたしてそれが、この劇場の入場券なのかさえわからない。

男は自分の持ち場を離れているので、誰かが勝手に入場しないか気になるらしい。早く金をくれと僕を急かしながら、背伸びして入口の様子をうかがっている。

入場料が5ドルなのは間違いない、僕は黙って料金を払った。男は金を受け取ると、さっさと自分の持ち場へ戻った。なんだかバカらしい、こっちはきちんと金を払っているのに、嫌な気分が残る。

退出の際、出入口で再び男と顔を合わせた。何も言わない僕に向かって、男は意気揚々とこう言った。

「システムが止まっているんです、あなたのためにチケットを持って行ってあげなきゃならなかったんです」

それが本当なら、わざわざ念を押さなくてもいいだろう。

「…だから、窓口へ行ったりしないでくださいね」

と、続きは言わない。

黙っていれば、僕も気付かないフリをして、バカな観光客のまま帰ったのに。僕は思わず言ってしまった。

「停止なんかしてないだろ、他の客はチケットを買ってるじゃないか。窓口へ行って確かめようか?」

白人の中年女性が、ちょうど財布からお金を出しているところだった。男は血相を変えて反論しつつ、窓口を遮る位置に立つ。もう、この男と話をするのもバカらしい。僕は反転して劇場を出た。

本当です、本当です、男は言葉だけは丁寧に、僕の背中に向って続けた。変な正義感を出して警備員の不正を暴いたところで何になる。この国がよくなったりはしない、どうせ逆恨みされるだけだ。僕は自分に言い聞かせた。

国立劇場が国民の誇りだって? 少なくとも、警備員がそう思っていないのは確かなようだ。


加倉大輔2008-05-19 Mon 19:26 TrackBack
この記事の感想

元気そうで何よりです(^ー^*)
南米長いですね 雨が多いせいか、このところ更新が頻繁にあり楽しませてもらってます

一休2008-06-10 Tue 22:21

こんにちわ

元気ですか?

サンホセの日本人宿であった杉山大介です

いかにもコスタリカ人らしい言い訳の仕方で思わずわらけてきました。

実は国立劇場の中には入ったことがないのですが、写真で見る限りは、すごくきれいですね。

DAIKUN2008-06-11 Wed 01:05
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