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南米~中米 カリブ海ヨットの旅顛末記 2 コスタリカ国立劇場の警備員

南米~中米 カリブ海ヨットの旅顛末記 番外編

The Day 2015 - 2008-05-13 Tue 23:21 Panama City, Panama… The Sea And Cake - So Long To The Captain
船室
キッチン
船長との別れ

船長のはなし。

船長はスウェーデン人のおじいちゃん。たぶん70才くらいだと思う。コロンビアのカルタヘナに若い奥さんらしき人がいる。もしかしたら、あっちの港にも、こっちの港にもいるのかも。

小さなヨットが家のような生活。人とは少し違った人生を生きてきた人の話は、やはりおもしろい。ある意味すごい旅人でもある船長について、あれこれ。

■ その1: トーストの焼き方講座。

船酔いで船室のベッドに張り付いて苦しんでいると、船長が、昼飯だ、と僕らを呼んだ。

みんなキッチンに集まった。キャビンの一部がキッチンになっているのだが、言うまでもなく、船そのものが狭いので、当然そこも狭い。

僕は船酔いでメシどころではなかったが、船長に呼び出された以上、なんだか行かねばならない気がして、二日酔いのようなしかめっ面で集合。

船はこれ以上ないほど揺れている。しかしスウェーデン製の船はよく出来ていて、船の揺れに合わせてコンロもぶらぶら揺れる。鍋やフライパンも固定されて一緒に揺れるので、多少揺れても問題ない。

船長は通路の壁に両足を踏ん張り、ぶーらぶら揺れるコンロを指差しながら、大声で説明を始めた。船は揺れる。

「トーストの焼き方を教える!! 見ていろ!!」

エンジンの音、波が船にぶつかる音、帆が風を受ける音、そして船体が軋む音が混ざりあっていてうるさい。大声を出さないと聞こえない。船は揺れる。

「まず油をひく!!」

船長はコンロの上のフライパンに油をたらした。両足を力強く踏ん張っているのがわかる。船は揺れる。

「次にバターだ!!」

バターが乗せられ、ジュゥと音がする。船は揺れる。全員どこかにしがみついている。コンロはぶーらぶら。船は揺れる。

「最後にパンだ!!」

溶けたバターに食パンが乗せられた。船室に香ばしい匂いが充満する。船は揺れる。全員が両足を踏ん張っている。もう限界、気持ち悪い…。

「よし出来た!! そしてこのパンはオレのだ!!」

船長はすこぶる元気。僕はそれどころではなく、ベッドに戻って倒れ込んだ。

せ、船長、何もこんな状況でパン焼かなくても…。

■ その2: 船酔い。

気分はどうだ、出発から三日目の朝、船長が訊いてきた。僕は、少しマシになったよ、と答える。

「オレが最後に船酔いになった時は、四日間苦しんだよ」

船長がそう言った。

ぐわんぐわん揺れている船の中で、老眼鏡をかけて本を読んでいる船長。そんな船長でも船酔いになることがあるのか、少し驚いたが、当然の疑問が浮かぶ。

それはいつの話ですか、僕は訊いた。

「1971年だ!!」

せ、船長、それは僕が生まれた年…。

■ その3: イエメンの処刑。

夜中、豆電球ひとつの明りの下で、船長がむかし話を始めた。

船長は若かりし頃、ジャーナリストだったらしい。取材でイエメンの小さな村を訪ずれた時の話をしてくれた。

当時イエメンは、西側文明諸国とは完全に隔離された文化を維持しており、外国からの電波を嫌って、ラジオさえも禁止だったという。

その村には、すっかり日の落ちた夜中に到着した。村は高い城壁で囲まれていて、門は閉ざされていた。

城壁の上で笛や太鼓を鳴らして、楽しげに踊っている人々がいた。今日は祭でもやってるのか、船長たちの一行は質問した。

「あんたら、もうちょっと早く来れば楽しいものが見れたのに!!」

そう返事が返ってきた。なんだ楽しいことって、そう訊き返す。

「処刑だよ!!」

罪人を処刑したらしい。どうやって処刑したんだ、首でも切ったのか、という質問の答えは、こうだった。

「俺たちは現代人なんだよ、そんな野蛮なことはしない、車で轢き殺したのさ」

現代人が乗っていたのは、ホンダか、トヨタか、ミツビシか…。

■ その4: イスラエル人の反乱。

コロンビアとパナマを行き来するヨット、船長の同業者のはなし。

あるイスラエル人のグループが、運悪くラテン系の現地人船長の船に乗ってしまった。

出発してカリブ海を航行中、船長が酒を飲んで泥酔、一向に先へ進まない。そしてなんと、船長は食料も用意していなかったことが発覚。食いものがない。

これにはイスラエル人も怒った。そして反乱を決意。

船長は紐で縛られ、船室に転がされた。そしてここからがイスラエル人のすごいところ。

さすが男も女も兵役あがり。何の目印もない海の上で、計器を頼りに航海を続行。船を隅から隅まで捜索し、船長が隠していた現金を押収して食料を買い込んだという。そして無事に、と言えるかどうか、目的地のパナマへ到着してしまった。

しかし到着したはいいが、イスラエル人たちは船乗っ取りの罪で逮捕されてしまう。その後、裁判によって、やっぱり船長が悪いということになり釈放されたらしいが…。

旅の仲間にイスラエル人が一人いるといいかもしれない…。

■ その5: クナ族の金儲け。

サンブラス諸島は、太古の昔からの先住民族、クナ族の自治区となっている。彼らは今でも自給自足の生活を送っている。

無人島の島影に停泊していると、どこからともなく日焼けしたクナ人がやってきて、魚やココナツ、バナナなどを売りにくる。中には魚とガソリンを交換してくれ、というのまであった。

クナ族の人々にとって、外国人が乗ったヨットは貴重な現金収入のチャンスだ。そして観光客が一番興味を示す商品は、モーラと呼ばれる刺繍。原色に彩られた魚や亀などが、緻密に、とは言い難いが、綺麗に刺繍してある。

ある時、船長が乗せた客のひとりが、このモーラを200枚買いたいと相談してきたらしい。会社のパーティで従業員に配るという。

提示金額は一枚30ドル (3100円)、総額62万円にもなる。ほとんど現金収入のないクナ族にとっては、またとないチャンス。未来永劫、子孫にまで語りつがれるべき話だ。

さっそく船長はクナ族の知人に連絡、モーラ200枚を港まで持ってくるように指示した。

ところが、喜び勇んでやって来るかと思いきや、港まで30分もかかるし、ガソリン代も高い、などとブツブツ文句を言って来ようとしない。船長はなんとか彼らを説得したが、ひとつ条件を出してきた。

一律30ドルというのは納得がいかない、それぞれ値段が違うのだから、その値段で買ってもらいたい、と言うのだ。まぁそれも当然かもしれない。商談はまとまった。

だがしかし、クナ族が要求した金額は、買い手が提示した金額より少なかった。計算すると一枚あたり27ドルになり、彼らは一枚につき3ドル損をしてしまった…。

やっぱり綺麗な所に住んでいると、心も綺麗になるんですね…。


加倉大輔2008-05-13 Tue 23:21 TrackBack
この記事の感想

 思わず抱腹絶倒~~~~~!!
 とても濃い内容のヨットの旅だったご様子! 楽しいです。
 船長さん、すごく面白いキャラクターしてます!

 海のヨットでも、イギリスやオランダの運河のボートでも、
住居である船で、あちこち彷徨うのは憧れますね。(荷造りする必要無いってのは、本当に楽です!)船酔いさえなければ…。

butabuta2008-06-03 Tue 14:57

話すごい面白かったです!
船長さんのイメージもむくむくと湧いてきました。ひげ顔で、まっちょで、とても豪傑そうなおじさんをイメージしてます。
その船長さんはずーーーっと船の上での生活なんですか?船酔いしていた船の上で生活だなんて!
あっ、無事に着いたみたいでよかったですね☆choro

choro2008-06-03 Tue 23:26
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