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ラパスで偽警官と出会った 二千日の旅

チリで荷物を盗まれたからチリなんか嫌いだ

The Day 1928 - 2008-02-16 Sat 19:09 Arica, Chile… Red Hot Chili Peppers - Fortune Faded
アリカのバスターミナルの前

二度目のウユニ塩湖を訪ずれた後、すきま風だらけのバスで標高 3,700m の国境を越えて凍えながらチリへ入った。

ボリビアに比べて急に物価が上がった。国が違えば物価も変るのはいいとして、問題はただ値段が高くなっただけで、その質とサービスがまったく釣り合っていないように感じる。

料理も美味しくないし、人が親切なわけでもなく、宿もボロくて高い。財布の中身がものすごい勢いで減っていくので、毎日 ATM を探しまわる。

なんとなく居心地が悪い。そういえば、他の旅人からチリが良かったという話を聞いたことがない。ただ通り抜けるために入国しただけなので、移動を続けて、早々にペルーへ抜けることにした。まっすぐ国境の町、アリカまで進んだ。

数日骨休めをした後、早朝出発するペルー行きのバスチケットを買った。ところが、早起きしてバスターミナルへ行ってみると、バスがない。バス会社の男は、二階建の大きなバスだと言っていたのに、バスさえない。

バス会社の男は悪怯れた様子もなく、問題ない、問題ない、とくり返すだけで、何の説明もなしに、僕らをタクシー乗り場へと連れていった。

僕らは相乗りのタクシーに乗せられることになった。国境越えは、もともとタクシーしかないのかもしれない。僕らは、ありもしないバスのチケットを買わされたのだろうか。それを確かめる方法もなければ、すでに騙されているのなら、確かめたところで、どうにかなるわけでもない。

タクシー乗り場の小さな事務所の中、猜疑心と諦めの気持ちのまま、出国書類に必要事項を記入する。書類を提出した後、僕は荷物をタクシーのトランクへ積み込んだ。空けっぱなしのトランクの横に棒立ちになり、出発まで荷物を見張ることにした。

よっちも書類の記入が終り、タクシーまでやってきた。他の乗客も揃い、運転手も乗り込み、いざ出発という段になって、よっちの手荷物がない事に気が付いた。

よっちは僕が先に車に積み込んだものだと思ったらしい。もうダメだと思った。タクシーを待たせて、急いで事務所へ戻ったが、椅子の上に置いてあった小さなバックパックは消えていた。

書類を渡した女性に、ここにバッグがあっただろうと訊ねたが、まったく相手にしてくれない。仕事の手を止めることもなく、僕らに目を向けようともしない。あんたの荷物がなくなろうが私には関係がない、そんな態度だ。

三人も入れば窮屈な、事務机と椅子が二~三脚あるだけの小さな事務所。よっちは女性の座っている机の端で立ったまま書類を記入して、後ろにある椅子の上にバッグを置いていた。

僕がタクシーへ荷物を積みに行った、わずかな間に盗まれた。よっちが振り向くまで、一分もないほどの時間。僕らは二人いることに安心していたのだろう、それが油断を生んだ。

事務所の奥にいた客らしき女性が、外へ出る際に盗んだのかもしれない。事務所の女性とグルだったのかもしれない。あるいは、外国人の後を尾けてきて盗む機会を伺っていた奴がいたのかもしれない。

考えたところで今となってはどうしようもない。ひとつだけ確実なことは、今日の移動は中止だということだ。

近くにいた警官を呼んできて、荷物を盗まれたことを話した。しかしきっとここチリでは、置き引きなんて犬が道端で小便をしたも同じなのだろう。誰も気にも止めないし、警官も警察署へ行けとひとこと言い放っただけで何もしない。

僕らの常識では、盗む奴が悪いに決まっているが、ここでは盗まれた奴が悪い。無関心な警察、人々、怒りと情けなさで、誰も彼もが悪人に見えてくる。

バス会社へ行き、明日のバスに変更してくれと頼んだ。そもそもバスさえないのに何を変更するのかおかしな話だが、形式上そうするしかない。

バス会社の男は、また、問題ない、問題ない、をくり返し、ヘラヘラ笑っている。あまりの態度に腹が立つ。あんたが連れていった事務所で盗まれたんだ、と嫌味のひとつも言ってみるが、向こうで起きたことは関係ない、チケットは変えてやる、問題ない、とまたくり返す。

気丈に頑張っていた、よっちが泣き出した。僕はヘラヘラ笑う男に言った、もう問題は起きたんだ、笑いごとじゃない。男の目を睨みつけた、男は口をつぐんだ。

警察署まで行き盗難届けを提出し、保険の請求に必要な書類をもらってきた。盗まれたのは、コンパクトカメラや衣類、最も痛手となったのは、高価な化粧品の数々、後進国では手に入らない。現金やパスポートなど、絶対に盗まれてはいけないものは、ぜんぶ僕が預かっていた。それだけが救いだった。

もう僕はチリなんか嫌いだ。チリワインはもう飲まないと心に決めた。いや、それどころか、チリと名のつくものは、ぜんぶ嫌いだ。

ふぐちりも、ちりめんも、ちり紙交換も、チリ人妻も嫌いになった。地理の勉強なんか決っしてしないし、Red Hot Chili Peppers を聴いている奴とは友達にならない。さらに言うなら、チェリーもジュリーも似ているから嫌いだ。もう嫌いなんだからしかたがない、たとえそれがとばっちり、だとしても。


加倉大輔2008-02-16 Sat 19:09 TrackBack
この記事の感想

大輔君の記事を見てると、目の前に情景がきれいにはっきり、浮かんでくる。それもカラーで。
 でも、ひやひやものですね。よっちは、平和の国ジャパニーズですか? 大事なものが取られなくてよかったですね。
チリってモラルがない国かしら?

ぽち2008-04-27 Sun 23:29

置き引きに遭った!不運ですな。次回から注意しましょう。中国にはスリがウヨウヨいます。海南島は拳銃がとか。
ところで、1998日目、もう直ぐ2000日に。約6年、長い外国旅行ですね。   私の場合は8年 日本に帰っていませんが、移住なので 別ですな。
 貴兄も最も良い場所に民宿とネットカフエで生活費を稼ぎ出しての移住を。資金?皆に募れば少しは集まろう「夢!を買ってください。」(ネットだと、妨害、炎上かな)。
 そう言えば北海道の左芯(心が3つ)さん(長身女性)。貴兄を知っていると。我がHPで4月11日に紹介しました。
 今後も健康で「旅」を御続け下さい。 中国 興坪 林

hayashi2008-04-27 Sun 23:58

 2000日ですね! おめでとうございますーーーーー!!

 お久しぶりの更新ブログの内容は、災難でしたね…。良心とか人情とかはないのでしょうか…?
 よっちさん、負けるな! 頑張れ!

 今のところ南米には興味が無いけれど、私もチリへのツアーには行きたくないなあ…。これじゃ、観光面ではサービスなんて期待出来ず、それ以前の問題が多そうですね。

 ともあれ今後も、お元気で、安全・快適な旅が続けられるようにお祈りしています。

butabuta2008-04-28 Mon 09:16

大変な災難に合われたのに、ふぐちりもちりめんもって、
やめてください。
笑っちゃうじゃないですか。

よっちさんの泣き出してしまった気持ちが分かるようです。
慣れない旅で張りつめた心を加倉さんにほぐしてもらって、
たび、続けてください。

おふろやです。2008-04-28 Mon 18:28

大変は事でもう嫌な気分になったのを分からないことではないですが、世界旅行を楽しむためには一つの経験で皆のことを判断するのはよくないと思います。私も平和な母国のニュージーランドから日本に来てもう8年に立ちますが、ニュージーランドでは一回も経験しなかった不愉快なことがいっぱいありましたよ。不動産に詐欺されたり、泥棒が二回も家に入ったり、騙されたり、変なストーカに襲われたり、良くないことがいっぱい起きました。やっぱり外国人としての生活には色んなことが起きますよ!でも、まだまだ日本が好きです。日本人皆が嫌だとは思ったことがない。どんな国に行っても悪い人はいます。それでも暖かい心を持ってる人がもっと多いでしょ。悪い経験で心も強くなるし、今からの人生に勉強になると思います。がんばってくださいね!

M2009-09-06 Sun 16:48
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