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赤道一周が約四万キロメートル。だから十万キロだと、地球を二周半ということになる。日本を出発して1722日目、僕がこの旅で移動した距離は、十万キロを越えた。
飛行機は一度も使っていない、すべて陸路と海路での移動。船、列車、地下鉄、バス、タクシー、乗用車にも四駆にも、トラックの荷台にも乗った。自転車、バイク、トゥクトゥク、リクシャに人力車、ロープウェイにも、大八車のような何と呼べばいいのかわらない乗り物にも乗った。
そして徒歩、ときどき必要にせまられて走った。空を飛ぶという手段以外なら、何でも利用してここまでやってきた。
海や湖や川を渡るため、小舟、大船、フェリーにも貨物船にも乗ったけれど、飛行機、ヘリコプター、飛行船、パラシュート、気球、UFO、爆撃機、無人偵察機、大気圏外へ突き抜けるロケットなどには乗っていない。
風船を何個も束ねてぶら下がってみようとか、ゲゲゲの鬼太郎が乗っていたイッタンモメンと友達になりたいとか、はたまた、ハリーポッターも愛用している Nimbus 系の箒が Yahoo! オークションに出品されていないか検索しようだとか、そういった邪道なことは、いくら陸路移動に疲れても考えたこともない。
孫悟空が乗るキン斗雲は、一飛びで十万八千里、424,440キロメートルも行くらしいから、現存する乗り物としては他のあらゆる物より断トツに速いが、僕は利用する気にもならない。そんなズルをするなど御釈迦様が許すわけがないし、第一それほど速かったら、インドなんかあっと言うまに通り過ぎてしまうではないか。
このように、僕は陸と海だけの乗り物を駆使して十万キロを移動してきたわけだが、まだまだ未体験の乗り物もたくさんある。この先、僕に残された選択肢を考えてみた。
まず水上ならば、ヨット、イカダ、海賊船、幽霊船、バナナボート、浮き輪、などがある。ボディボードやサーフボードなど、かなりの技術が必要な乗り物は、パソコンが濡れてしまう恐れがあるので遠慮したい。それにあれは、岸に戻ってくるので意味がない。
イカ釣り漁船は夜中にまぶしくて寝れそうにないし、カニ漁船は北の海へ行くので寒くて嫌だ。マグロ漁船なんかは、まったくもって論外。何カ月も海の上で魚を追うことになり、目的地がどこなのか忘れてしまう。でもマグロはちょっと食べたい。
また、なにかしらのコネがあれば、戦艦、巡洋艦、駆逐艦、空母、などのネイビーシリーズも利用する機会があるかもしれない。夢は広がるばかりだ。
空を飛ばなければいいわけだから、なにも水上にこだわる必要はない。旧ソビエト海軍は中古の潜水艦を安く売りに出しているかもしれない。
原子力潜水艦ならば、一度も浮上することなく、地球を一周して僕の故郷の有明海に出られるはずだ。陸から二百海里離れていれば、どこの国でもないわけだから、ビザの心配もしなくていいし、両替レートで悩まされることもない。
ただ、一人では操縦できないので仲間を募る必要があるが、有明海に行きたいという旅人を何十人も見つけるのは不可能かもしれない。
陸上の乗り物は、ほとんど乗りつくしたと言っていいだろう。残された物と言えば、トラクター、セグウェイ、籠、ベビーカー、竹馬、くらいしかない。しかし、どれも移動手段としては遅すぎるので、わざわざ乗る必要はまったく無い。バスに乗ればいいのだ。
スケートボードやローラーブレード、一輪車などは、なかなかスピードが出るので有効な移動手段と言える。だけど体力勝負だし汗をかくのが問題だ。なぜなら腹が減って食費がかさむし、洗濯は基本的に手洗いなので毎日毎日洗っていられない。だから、バスに乗ればいいのだ。
ならば動物はどうだろうか。馬やラクダや、トナカイなら人間を乗せることができる。ロバやフランダースの犬なら荷物を運んでくれるだろう。かつてはイルカに乗った少年がいたくらいだから、海だって渡れるかもしれない。個人的にはキリンが好きだが、ゾウだと鼻を使えるので、乗ったままスニッカーズが買えて便利だ。
しかし重大な問題がある。動物は国境を越えられない。パスポートが無いからビザがもらえないのだ。だからやはり、バスに乗ればいいのだ。
いっそのこと、乗り物さえも使わないという選択肢もある。歩けばいい。歩くのに飽きたら、五体投地でもいい。疲れて涙がこぼれそうな時は、上を向けばいい。ただし、三歩進んで二歩下がるのは、何の意味もないから止めたほうがいい。ダンボールを輪っかに繋げて、中でハイハイして進むというキャタピラ作戦もあるが、残念なことに後進国では頑丈なダンボールは手に入りにくい。
人力移動はなかなか良さそうにも思えるが、やはりこれにも重大な問題がある。もうそれを説明するのも面倒なので、早い話が、切符を買って、バスに乗ればいいのだ。
さて、こんな具合で、様々な選択肢の中から、僕はバスを選んで旅をしてきたわけだが、なぜ陸路にこだわりだしたのか、自分でもよく覚えていない。出発した時は、そんな事は考えもしなかった。ただ中国まで船で行けたので、なーんだ飛行機なしでも行けるんだー、と勘違いしたのが始まりだったと思う。
今思うと、わずか二カ国目の中国で 「全部飛行機なしで行けるかも」 と思うこと自体が、やはり勘違いなのだが、案外ここまで来れた。この先も船があることは確認済みなので、陸路と海路だけでの世界一周は可能なようだ。
逆に、空を飛ばないと決めてしまうと、行けない場所があることに気づく。ブータンは飛行機での入国しか許していないし、スーダンは北のエジプト側からは入国できるが、南のケニア側ではビザが取れない。イースター島にも、ガラパゴス島にも、ミクロネシアだかポリネシアだか、たくさんあるネシア関係にも行けない。ナスカの地上絵は地上で見ても何のことだか意味がわからない。
そもそも、飛行機を使わないことに、たいして意味などない。飛行機の方が速いし、安いし、一日あれば世界のどこへでも行ける。
成都からラサへ、チベット高原を彷徨った雲の上の移動は、高山病で常に頭痛に悩まされ、一カ月もかかった。アフガニスタンでは、爆弾で破壊された穴だらけの道を二日間バスに乗りつづけた。イランのテヘランからトルコのイスタンブールまで、列車と船を四日間乗り継いだ。ぎゅうぎゅう積めのエジプトからスーダンへ抜ける船、そしてその後に待っているボロボロの砂漠列車、朝目覚めると体に砂が積っていた。ウガンダでは一台の乗用車に12人も乗った。南アフリカからブラジル行きの船は、大西洋の真ん中で故障した。
炎天下でトラックの荷台に立ちっぱなしのこともあれば、夏なのに寒くて眠れないこともあった。バスの中で過ごした夜は数えきれない。寝ていても貴重品を体から離すわけにはいかず、神経は常に起きている。目的地へ着けば、今度は疲れた体と意識で宿を探す。移動が長くなればなるほど、体力を消耗して、よく熱を出した。
長期旅行者にとって、十万キロというのは、実は大した距離ではない。でも僕の十万キロは、日本からぜんぶ繋がっている。大部分はひとりで移動したが、旅の道連れもたくさんいた。苦労と苦痛を共有した、そのひとりひとりを思い出すことができる。もう連絡もしない人もいるし、今でも道連れのままの人もいる。
僕はどこまで行くのか、どこまで行けばいいのか、自分でもわからない。世界一周をやりとげたい気もするし、どうでもいいとも思う。ひとつ言えることは、僕が飛行機に乗ることがあれば、それは旅の終りを意味するということ。僕にとって世界一周とは、陸路で繋がっていることに意味がある。飛行機に乗るということは、世界一周をやめて、家へ帰るということだから。
歩みは遅いけれど、行けるところまでを目指して、旅を続けます。
10万キロ越え、おめでとうございます。また一つの節目を越えましたね。
10万キロと一言でいっても、これ程内容の濃い旅は他にありません。
加倉さんの旅を見守っていた多くの人が、励まされ、感激し、世界の様々な問題を考え、その人なりの形のものを心の中に作ってきたと思います。
この素晴らしい旅人に出会えたことを、本当に感謝しています。ありがとう。
これからも、私(達)は応援しています。
お久しぶりです。大川市のけんぼうです。
こちらは、2ヶ月前に長男が誕生し、ますます旅に出にくくなりました。
加倉さんが、いつ旅を終えられるのかとんと見当もつきませんが、体に気をつけて悠々と旅を続けてください。
あなたのことを素晴らしいと思ったり、羨ましく思ったりしている小日本人は、ほんとうにたくさんいます。
あなたは、旅に憧れるそんな人々の代表なんだ(なんて意気込むこたーないですが・・)と思ってみるのも悪くないかも知れないですね。
それにしても、俺から見るとあなたはあまりにも素敵です。
大輔さん、10万キロ越えおめでとうございます!!!
私も大輔さんに出会えて本当によかったと思います。改めて素晴らしい方だなと、尊敬しています。
看護師になって、大変なことやつらいこと、時にはどうしようもなく何かに押しつぶされそうになる時があります。そういう時、大輔さんのホームページを見るとすごくほっとして、また明日も頑張ってみようと思えます。やっぱり大輔さんは素晴らしいです!
女性として、看護師として、これからも自分を磨いていきたいです。
これからも素敵な旅を続けてくださいね!
10万キロ達成おめでとうございます。
一時はHP辞めてしまうのか!?と思ったり、やきもきしたのですが、最近はd(-ω☆)ニヤリな面白い日記で、とても楽しませてもらっています。これからも、体に気をつけて旅をつづけてください。それでは、また。
日記を読ませていただき、声を出して笑う時もなんでか息苦しくなる時もありました。
有明海眺めながら、いつか話してみたい。
気をつけて、旅を繋げていってほしいと思います。
今、某国の島に住んでいるのですが、船といえば、港にど派手なオレンジの船、南極調査船が泊まってますよ。この国の船は知りませんが、ロシアの南極調査船なんぞは自分で衣服、食料などが準備できて、調査の邪魔をしない、と約束できるのなら、乗せてくれるときもあるそうです(知人がこうして乗ったので)。
ということで、南極に行くのであれば、この方法がお勧めっす。
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