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寒いクスコでインカ文明について熱く語る 陸路十万キロの旅

インカ文明のささやかな最後の抵抗

The Day 1719 - 2007-07-22 Sun 11:22 Cusco, Peru… Nirvana - Territorial Pissings
クスコの立ち小便
クスコの立ち小便 両側

クスコの町は美しい。どれもこれもスペイン人が築きあげた建築物ばかりだが、この町が美しいことは疑いようがない。

石畳の坂道や階段、広場に面した大聖堂、白い壁、レンガ色で統一された屋根瓦。白人が世界中に作った植民地は、どこも似たりよったりで、僕はいつも辟易してしまう。しかし町造りという点で言えば、白人が作る町並みは、やはり美しいと言わざるを得ない。

だからと言って、白い壁に照り付ける太陽の光が美しいだとか、標高3500メートルの空気は澄んでいるだとか、ここクスコでは、そんな旅情に浸っている暇はない。

クスコの町を歩くには、一歩一歩を確かめて歩かなければならない。石の階段が滑りやすいからでもなく、空気が薄いせいでもない。町中いたるところに、クソと小便が垂れ流してあるからだ。

ほとんどは犬のクソだが、中には人間のクソもあるから始末におえない。そして小便の犯人は人間だ。犬と違い、一箇所に大量の小便をしていく。道という道、壁という壁には、すべて小便の跡がある。

クスコでは決っして壁際を歩いてはいけない。そこはトイレと同じであり、たとえホテルやレストランの入口であろうとも、小便をかけた跡がある。だから壁に触れようものなら、それは便器に触れたのと同じことだ。

ゴルゴ13は必ず壁に背を向けて立つが、このクスコの町では不可能なので、暗殺の依頼は受けないはずだ。

クスコの道の大部分は坂道だが、これがさらに問題を悪化させている。液体は高いところから低いところへ流れる。そう、壁にかけられた小便は坂道を這い、階段を下り、一箇所に集まって、小便の水溜りを作り出す。昼間の強い太陽の日射しが乾かしてしまう前に、また誰かが小便の補給をする。

ある程度広い道なら真ん中を歩けばいい。しかし細い路地になると、この回避策が通じない。両側の壁には当然のごとく小便がかけてあり、それが流れて道を横断している。時には左右の壁から流れてきた小便が、路地の真ん中で交差していて、小便による通行止めをしている場合もある。

そんな道は通らなければいいのだが、そうもいかない。細くて薄ぐらい、近道のできる便利な道は、困ったことにクスコの人々が最も好んで小便をしにやってくる場所なのだ。

美しい石畳も、小便の前、というか下では、忌々しい小便拡散装置でしかない。見事なまでに隙間なく敷き詰められた石畳の路地は、小便の一滴も吸収することなく、重力の法則に従って、小便を長く広く、拡散してくれる。

こんな具合だから、路地を歩く際は常に爪先立ちを強いられる。他人の小便など踏みたくはない。しかし、クスコの人々は慣れているのか、それともとっくに諦めているのか、小便を踏んでも気にしないようだ。

路地の真ん中で小便が交差して流れていても、自転車でそのまま踏みつけて通ってしまう。僕ならそんな汚ない自転車は、ティティカカ湖の真ん中に沈めてしまう。

ある日ひとりのおやじが、人々が行き来する歩道のわきで、いつものごとく小便をしていた。そこはなだらかな坂道で、そのおやじより先に誰かがした小便がすでに流れていた。しかも大量に。

おやじは他人の小便の上に立ち、壁に向かってドバドバと小便をかけていた。自分が放った小便が坂を下って、自分の革靴を濡らしても一向におかまいなしの様子。そのすぐ後ろで、奥さんらしき女性が荷物をかかえて用が済むのを待っていた。

またある時、教会の鐘楼がコの字に突き出た壁の両側で、大人と子供が同時に小便をかけていた。この町では神聖な教会の壁でさえもトイレと同じらしい。つまり、教会は便器とかわりない。ならば明日から便器に向かって祈ればいいのだ。

壁という壁が便器だから、どこへ行っても小便臭い。ただでさえ空気が薄いのに、路地を通る際は息を止めねばならない。呆れたことに、これが世界に名の通った、超がつくほど有名な観光地の実体だった。

壁から流れ落ちる小便を迂回するたびに、壁に向かって立つ無防備な後ろ姿を目にするたびに、僕はそんな連中は問答無用で射殺してしまえとさえ思う。後ろから撃たれて血を流し、チャックから突き出したナニを指でつまんだまま、道ゆく人々に恥を晒せばいいのだ。

なぜ誰も、この不快極まりない、悪しき習慣を止めようと言い出さなのか不思議でならない。なぜ政府は公衆トイレを作らないのか。

そして、ふと思った。

もしかしたら、これはスペイン人が作った町への仕返しではないのか。いや、ここは俺たちの町だぞという、テリトリーの主張なのかもしれない。滅ぼされたインカ文明の末裔による、ささやかな最後の抵抗なのかもしれない。

そして、また、ふと思った。

なんのことはない、そんなだらしない具合だから滅ぼされたのではなかろうか。後ろ姿が、あまりにも無防備だったのだ。


加倉大輔2007-07-22 Sun 11:22 TrackBack
この記事の感想

 爆笑に次ぐ爆笑!! おなか痛い…。ひー。
 美しく「整形」された「タビフーフ」さんのサイトでも読みましたが、クスコの糞尿問題、本当に不快らしいですね。不快さは、加倉さんの記述がより具体的で、緻密、詳細ですが…。(すごい分析力と描写力…!)
 そんな処だと、さすがに犬猫は道端に寝転がったりしませんかね…?

butabuta2007-07-27 Fri 09:30

おお、、、
クスコからマチュピチュあたりは行ってみたいところだったのに。。。
こんな話を聞いてしまうとちょっと迷ってしまいますね。

北京も似たり寄ったりな状況は変わっていないです。
先日も3環路沿いの民家から小さい女の子が出てきたかと思うと、おもむろにその場でズボンを下ろして用を足していました。。。
扉を閉めずに大便している輩もまだ多いです。
相変わらず道路は唾がそこかしこにあるし。。。
ま、さすがに慣れましたが。

ちなみに今、北京は裸族の季節を迎えました。
暑い盛りです。

いばちん2007-07-27 Fri 14:29
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