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大西洋横断 新大陸へ リオデジャネイロで思うこと

大西洋のど真ん中で船がぶっ壊れて漂流した話

The Day 1416 - 2006-09-22 Fri 17:55 Rio de Janeiro, Brazil… Alan Silvestri - Cast Away
貨物船
クジラの親子

予定より5日遅れでブラジルへ到着しました。というのも、船のエンジンが大西洋の真ん中あたりで突然止まってしまったのです。

「船ってのは何日も走り続けてすごいなぁ」 と話をしてたその日の出来事。いやいや、止まりました。

水深何千メートルもある場所なので、足どころか錨も下ろせないし、船は波にまかせて流れるばかり。十数人のクルーと、わずか3人の客、僕とタビフーフの2人組は漂流者となったのでした。

といっても全長 200m もある巨大な貨物船。冷蔵庫、というより冷蔵部屋にはたっぷりと水と食料、ビールもコーラもパイナップルもキャビアもある。発電機も動いているから、通信機もエアコンもパソコンもサウナだって使える。

いざとなれば何百もあるコンテナをひとつひとつ開けていけば、きっといろいろと楽しい贈り物が出てくるに違いない。エンジンが動かないのを除けば、特に心配はない。

荒れ狂う波にもまれ、雷鳴轟く夜空に向かって、紫色に光る照明弾でも打ち上げてくれれば漂流の雰囲気も出るだろうけれど、実際は船長が 「船壊れたよ」 とドイツ語で会社に電話して終り。

僕らはホテル並に豪華な部屋で、タイタニックの主題歌、Celine Dion の My Heart Will Go On なんかをステレオで聴きながら修理を待つだけ。時間になったらダイニングまで行き、給仕さんにスープとメインディッシュを運んでもらって、最後にデザートを食べる。問題なし。

問題は修理するといっても、交換部品が必要かもしれない。もし自力で修理できなければ、部品をヘリで持ってきてもらうことになる。それでもダメなら、タクボートに迎えに来てもらう。その場合は最短でもブラジルまで15日かかるとか…。

僕は船が出発した直後、港を出るか出ないかという時からずっと船酔いで、薬をもらって何とか耐えていた。パソコンの前に座るのは15分が限界で、本も読めないし、飯以外の時間はほとんど寝て過ごしていた。

船酔いの薬はものすごく眠くなるので、いくらでも眠れる。枕は日本に帰ったらこれを買おうと思うほど心地よい。ベッドは広いし、シーツも布団も真っ白。最後にこんないい環境で眠ったのはいつだか、もう憶えていない。ただひたすら眠るのも、それはそれで快適だった。

しかし、あと数日で到着という段になって船が止まってしまい、この先半月も船酔いに苦しめられるのは、さすがに辛い。だってパソコンができない。

船酔いが酷いのは、僕がひ弱なのだろうか。タビフーフの2人組はまるっきり平気らしく、彼らの部屋へ遊びに行くと、タビフーフ嫁の絵美さんも、タビフーフ夫のヒロ君もいつも楽しげにパソコンをやっている。羨ましい…。僕もパソコンがやりたい、もしくは一緒に船酔いの苦しみを分かち合いたい。

彼らはそれぞれ1台ずつパソコンを持っていて、絵美さんはいつもサイトの更新作業で、ホームページビルダーと格闘している。ヒロ君はたいてい麻雀ゲームをやっていて、七対子狙いを対々和にすべきかどうか悩んでいる。

なんとこの大西洋のど真ん中で漂流中の日本人のパソコン普及率は100%。

漂流2日目の朝。僕ら、何の役にもたたない日本人の最初の話題は、前日の夜出された節水命令についてだった。

話によると、船で使う水は海水を汲み上げて脱塩処理しているらしい。エンジンが動いていないとそれができないらしく、大量の水を消費するシャワーと洗濯機は禁止となった。

ジュースもビールもワインも牛乳も、飲み水ならいくらでもある。シャワー無しでもバックパッカーには何の支障もない。僕らが問題にしていたのは、トイレは流してもいいかどうかだった。

節水のためオシッコは流さずにおこうだとか、ウンコはやはりキツイから流そうだとか、ナイフとフォークで目玉焼きを食べながら話す。これでも一応漂流中。

昼。僕がいつものように心地よい枕で寝ていると、絵美さんが大慌てで部屋へやって来た。クジラが泳いでいるという。カメラをひっつかんで外へ飛び出す。体長10mはあろうかという、巨大なクジラが3頭、僕よりでかい子供のクジラが1頭、真っ青な海を泳いでいた。

普段、通り過ぎるだけの船が止まっているのが珍しいのか、クジラの家族は1時間ほど船の回りを泳いでいた。僕らはカメラを抱えて、やれ右だ、今度は左だ、上に下に船の上を走り回ってはしゃいでいた。運がいい。これでも一応漂流中。

僕らがウンコについて相談し、クジラを追い掛け回している間にも、着々と修理は続いていたらしく、夜中の12時になってエンジンが再始動した。船は暖気もせずに走り出し、ブラジルへ向けて針路を取る。

節水命令は解除され、ウンコも好きなだけ流せるようになったが、危機感ゼロのまま漂流が終わってしまったのも何だか寂しい。荒れ狂う波にもまれ、雷鳴轟く夜空に向かって、紫色に光る照明弾… あぁ、これはさっき書いた。

長かった船旅もこれで終りかと思ったころ、船長がこんなことを伝えてきた。ブラジルの沖合いで船を止めて、修理部品が到着するのを待つ、3日くらいかかると言う。

港というのは車の駐車場と同じで、停泊している間お金を取られる。だから荷物の積み下ろし以外は、ボケーと沖合いに停泊する。僕らも南米大陸を目の前にして、上陸できないまま3日過ごしたが、綺麗な部屋に泊まれて、美味い飯を毎日食えて内心喜んでいた。

降りたいのなら迎えを呼んであげる、と船長が申し出てくれたが、いやいや僕らの運命はこの船と船長と共にあるのです、という態度で 「ノープロブレム」 を連発して、時間通りにしっかり飯を食った。

船は止まっているので揺れはほとんどなかったが、僕の船酔いはまだ続いていた。相変わらずパソコンをやると気分が悪くなる。もしこのまま陸上でもパソコンで気分が悪くなったらどうしよう。僕からパソコンを取ったら何が残るというのだ、ただのボウズではないか。

船も直って、入国手続きも終り、コンテナの積み下ろし作業を横目で見ながら、クルーたちにお別れを言って船を下りた。タクシーでリオデジャネイロへ向かう。着いた宿は、狭く、臭く、蒸し暑くて、ベッドは硬く、蚊が飛んでいて、ドアには取っ手がなかった。

昨日までの和洋折衷上げ膳据え膳、腹の減る暇さえない生活から、ダメ安宿の底辺の生活に戻る。独房のような個室の壁には、得体の知れない気味の悪い染みがついている。バックパッカーのあるべき姿に戻った。

さて、Hello World! 世界旅行、南米大陸編の始まり、始まり。


加倉大輔2006-09-22 Fri 17:55 TrackBack
この記事の感想

 祝・南米大陸編スタート!!

 無事上陸できて、何よりです!!
 どうかこれからも素晴らしい旅を!
 素敵なお写真、待ってます!!

butabuta2006-09-26 Tue 10:15

更新楽しみにしてました。
タビフーフもずっと見てるサイトなので、同じ船に乗って
いるんだろうとは思っていたけど、乗客がたった3人だったとは。めちゃくちゃラッキーですね!
今後も素敵な写真と日記楽しみにしています!

めえ2006-09-27 Wed 01:46

船上でひさしぶりの贅沢を堪能できたみたいでよかったです。
南米はこれから夏?に向かうのかな??
最高の思い出をたくさん作ってくださいね〜。

dignify2006-09-27 Wed 05:17

大輔さ〜ん元気そうでなによりです☆
いいなぁブラジル。夢です、リオのカーニバル!
くみが海賊になった際はまずブラジルから攻めます!!
よかったら大輔さんはSEとして仲間になってください♪

くみ2006-09-27 Wed 23:52

こんにちは。お久しぶりです。
先日、加倉さんにメールをお送りしたのですがお返事がないので心配しておりましたがご無事そうで良かったです。

宜しければパソコンの方に先日のお返事をいただければ幸いです。
大変でしょうが、旅を楽しまれてください。
遠い同郷で無事を祈ってます。

雅子

まさこ2006-09-28 Thu 18:10

こんにちは。
無事?到着されたようで、よかったよかった。
しかも、超快適生活(船酔いがなければ・・)だったようで、うらやましいです。
船旅もいいなぁなんて、思ってしまった。
漂流の時、一番悩んだことが、う○こを流すかどうかっていうのは、リアルで、おもしろかったです。
ではまた☆

マリ2006-09-29 Fri 01:35

おつかれした
旅する日記まわってるようですね
それでは

HERO志2006-09-29 Fri 19:07

ちょっと、、クジラ、本気で羨ましい。すごいね。僕らはヒグマとムースとバイソン見て、シロクマに向けて四苦八苦しています。二ヵ月後には南米戻るから、最後にもう一回会えるかもね。じゃ、お互い良い旅を。そういやあ、一人500$出して、ボロの車を買いました。北米の交通手段と宿です。ボロすぎで、早速参っています。

原賀伸2006-09-30 Sat 06:03

 いやいや、お疲れさまでした。

 やはり船旅は安全でなければ……たとえ漂流していても
(。・ω・)ゞデシ!!

 URLに示した、私の友人がエクアドルにいるはずですので、もし赤道へ向かうなら、ぜひ立ち寄ってみてください。

 更新楽しみにしています!

あまてらす2006-10-01 Sun 03:12

大型船でも、漂流する事が。ソリャ機械だから、人体も故障する。南米 ブラジル、遠い国 地域だな。
 異国に住み着いた私には もう行けない土地だろう、行った気分にさせてもらえる様な、沢山の旅情報を御願いします。今回の「漂流」も面白かった!(他人事、過去形。責任なし)。船酔い、‘馴れろ‘と。北米から日本へ、船便が有るのかな?セチガライ日本に帰らない!!南米の何処かに 住み着くのも方法の1つ。民宿とパソコン指導、修理で食える。それ以上 何を望む?

hayashi2006-10-01 Sun 09:26

とうとう日本の反対側に到着ですね!!
わたしの地元は南米系の人が多いので有名。
彼らも地球の反対から来てるんだな〜と加倉さんの到着で再確認。

aya2006-10-01 Sun 11:32

生きてますね!
相変わらず私は北京でくすぶっています。
オランダで会いましょう!の約束覚えていますか?

※知っている名前がちらほら・・・

azuma2006-10-04 Wed 15:44
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