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| 怪しい男は森さんと名乗った | おいでイスタンブール |
イランの首都テヘランから隣のトルコの西の端、イスタンブールまで一気に行ける国際列車があるらしい。3泊4日の旅、国境を越えて 2,500km を走り抜くという。
これはいい、僕は列車の移動が一番好きだ。ベッドに横になれるし本も読める、食事は上げ膳据え膳、バスのようにトイレに行けず困ることもない。それに車窓から流れ行く風景を眺めていると、旅をしていることを最も強く感じることができる。
さっそく宿の従業員に、どこで切符を買えるのか尋ねてみる。駅へ行け、実に簡単な答えが返ってきた。
熱い太陽の照りつける昼下がり、アスファルトを踏むと、まるで消しゴムの上を歩いているかのようにグニャグニャしていた。持っていた水はすぐにお湯のようになった。
駅まで歩くつもりだったが途中で音をあげてバスに乗った、熱中症になりそうだ。テヘランは標高 1,200m に位置する。きっと涼しいだろうと思っていたが大間違いだった。
砂漠でも横断してきたかのようなフラフラした足取りで駅へ辿り着いた。朦朧とした頭で切符売り場へ向かう。
イスタンブール行きの切符をください。
窓口の黒装束の女性に告げると、彼女は事も無げにこう言った。イスタンブール行きはここでは買えません、旅行代理店へ行ってください。
あぁ、1時間もかけて何しにここまで来たのだろう。僕の気力はそこで尽きた。
次の日。
駅へ行けと僕に教えた宿の従業員に、切符は買えなかった、と不平を漏らしながら代理店の場所を尋ねる。
不確かな事を適当に教えてしまうのは途上国ではよくある。だから例え道を教えてもらっても完全に信じてはいけない。何人かに訊いて同じ答えが返ってくれば初めて信用できる。
しかし、イランではまったく英語が通じない。今まで訪れた国の中で最も通じないと言ってもいい。だから誰か他に尋ねたくても尋ねようが無い。僕がペルシャ語を話せばいいのだろうが、即席で覚えた言葉ほど頼りないものはない。一言二言を話せても、返ってくる返事は何一つ聞き取れないのだ。だから僕には、この信用ならない従業員の言うことを信じる他に術が無い。
教えられた場所へ代理店を探しに行った。しかし、どこをどう探しても見つからない。どうやら今日もやられたのか。
また次の日。
従業員は別の代理店を知っているからと、紙に住所を書いて寄こした。どうして昨日教えてくれなかったのだろう。
営業しているのかと尋ねると、大丈夫だという。イランでは昼休みが長く、午後になるとさっさとシャッターを下ろし、夕方まで休んでしまう店が多い。
イスタンブール行きの切符を買えるかどうか電話して訊いてくれ、僕は従業員にそう要求した。もう行ってみて途方にくれるのは御免だ。そして案の定、その代理店で切符は買えないとわかった。
電話口で別の代理店を聞き出し、今度はその店へ行けという。溶けたアスファルトを避けながら、日陰から日陰へ。上も下もわからぬミミズ文字の書かれた紙きれを頼りに代理店を探した。
イスタンブール行きの切符をください。
僕はこの一言のために、すでに2日を費やしている。
今ですか? 窓口の女性が訊き返してきた。イランでは明日切符を買いたいのですが今日来てみました、という珍しい客がいるのだろうか。そうです、今です。そう答えるしかない。
わざわざそんな質問をしてきたのには意味があった。どうやら切符を発給するシステムが故障していて、今、はまずいらしい。30分後に来てくれという。
はいはいと答えて食事をしに行く、どうせ30分という時間に根拠などないのだろう。そう思いつつ戻ってみると、あと15分、いや2時間、という。もちろん15分にも2時間にも根拠は無い。
もういいから他の代理店を教えてくれ。近所の代理店を聞き出し、すぐさまそこへ向かった。しかしここでも同じことの繰り返しだった。どうやら故障しているのは列車会社のオンラインシステムらしい。これではどこの代理店へ行っても結果は同じだ。
さらに次の日。
昨日の2軒の代理店へ行くが、まだシステムが動いていない。切符は駅へ行って買えと言い出した。なぜ客である僕が、駅では買えないことを教えてあげないといけないのだろう。
しまいには切符は無い、満席だという。システムが動いておらず駅でも切符が買えないのに、どうやって満席になるのか、僕が尋ねると返事は無かった。どうやらうるさい客を追い払いたいらしい。
僕はその場を去り、最後の望みを託して一度追い返された駅へ向かった。
駅ではやはり、代理店へ行けの一点張り。代理店では買えなかった、システムが動いていない、どうすれば切符が買えるんだ、どこの代理店へ行けばいいのか。案内所の若い女性に、英語をゆっくりゆっくりと発音して訊いた。
なんとか地図を描いてもらい、それを頼りにまた溶けたアスファルトを歩く。これでだめなら諦めてバスで行こう。
イスタンブール行きの切符をください。
応対に出た中年女性が、たどたどしい英語で言った。明後日の切符があります。
天使だ、あぁこの人は天使に違いない。アッラーの神よありがとう。
僕は勢い良く57枚の1万リアル札 (7,125円) を払った。あぁこれで切符を求めて彷徨い歩いた日々が報われた。
切符を発行しますので、座ってお待ち下さい。はいはい、待ちますとも、待ちますとも。天使の言うことなら何でもききますよ。
… 30分
… 1時間
… 1時間半
食事にでも行こうかなと思った頃、ついに一枚の切符ができた。やった、やったぞ、アッラーの神よありがとう!!
でも、神様。もしできることなら、もう少しイラン人に働くように伝えてはくれまいか。
切符購入奮闘日記、大変ご苦労様でした。
大輔さんの粘り強さにも感心します。
横山やすしなら、とっくにメガネを床にタタキツケてると思います。
イランは短期でしかもフリーで旅行する人には向いてない国なんだなー って良く分かりました。
これじゃ、電車のダイヤもあってないようなものなのかな?又5時間遅れとかかしらん。
日本ってやっぱりスゴイ国なんだね。いい意味でも悪い意味でもありますが。。 byタローくん
あはは。お疲れ様。大変だったね。次はイスタンブールか〜うらやましぃ。
リクエスト、120%大成功です。どうもありがとうございました。
イラン人から都会だと聞いていたので、高いビルがひしめき合っているかと思いきや、低い建物が多かったです。
空と道路が広々していて、写真から乾いた空気が伝わってくるようでした。
テヘランの家族(森さんね)、働く人々、どれも生き生きとした表情で良い写真でした。
そうそ、そのイラン人もかなり白人に近くて、メリハリのある顔だったので、カッコイイと評判でした。
今頃は、イスタンブール行きの列車の中ですね。
♪おいでイスタ〜ンブ〜ル〜という昔の流行歌を思い出します。(古過ぎ?)
たぶん、これで私のリクエストは全て終了したので、また考えておきます。お気をつけて!
はじめまして。
そしてキップ購入お疲れ様でした。
海外であまり働かない人に出会うともう大変ですよね。
以前、とあるヨーロッパの空港で免税手続きをしようとして大変な目にあいました。
あれしろ、これしろ、それからあれしろ…
全部やったけどまったく聞く耳持ってくれなかった。
それもきっと私がその国の言葉を話さず全部英語だったせい。
ある程度その国の言葉を知らないと自由にできないと言うことなのか?
それにしても、暑いとアスファルトって溶けるんですね。
自分も電車の移動時間大好きです。
なんていうか、いろいろ考えごとしたりボーっと景色を
眺めたりするのが好きというか もう癖(笑)
加倉さんは移動時間ものすごく多いんでしょうねー。
お尻痛くなったりまぁ楽しいことばかりというわけには
行かなそうですが(笑)
自分もたまに乗り過ごして勝手に尻痛くなったりしてますが。
次の更新楽しみにしてます。
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