Template Last Updated: "2010-02-01 Mon 20:37:34"
Home トップページ
世界一周旅行ときどき日記 記事一覧
マシュハドの名前の無い宿 怪しい男は森さんと名乗った

テヘランで怪しい男に出会った

The Day 948 - 2005-06-11 Sat 13:42 Tehran, Iran… 2 Unlimited - Maximum Overdrive
モリさん (左) とムコさん

バスでテヘランへ到着したのは、東の空に浮かぶ雲が、真っ赤な朝焼けに染まる夜明けの頃だった。

タクシーに乗って目星を付けておいたマシュハドホテルへ行くと、そこは随分と立派なホテルで、一泊40ドルだという。ありふれた名前だし、同じ名前の高級ホテルへ来てしまったらしい。安宿の住所は調べていなかった、僕はいつも見切り発車で詰めが甘い。

仕方なく安宿のあるという通りへ行くが、早朝で人通りもなければ、軒並みシャッターを閉じている。何件かの宿を訪ね、寝ている従業員を叩き起こすと、値段が高かったり、後で来いと追い払われたりして途方にくれた。

一晩のバス移動で疲れているし、何よりも眠い。僕は早く真っ直ぐなベッドに横になりたかった。今なら隣でロケットエンジンの試運転をやっていてもぐっすり眠れるに違いない。

次の宿を探してトボトボ歩いていると、偶然にも、お目当ての宿を見つけた。実際にはマシュハドホテルではなく、マシュハドホステルだった。どうやら昔はマシュハドホテルだったらしいのだが、高級ホテルと間違える客が多いせいか、それとも苦情が来たのか、ホステルになっていた。

そんなことはどうでもいい、早く寝かせてくれ…。従業員もやはり叩き起こされて眠いのだろう、チェックインもパスポートも後でいいから、とりあえずここに寝ろと、部屋へ通された。

僕は昼過ぎまでぐっすり眠った。完全に疲れきった体には、ベッドや枕の寝心地など関係ない。眠れるというだけで、硬いマットレスと長い間洗っていないであろう毛布が、桃源郷のように心地よく感じる。

一眠りして体力を回復させた僕は、近所で食事を済ませ、町を散歩した。金曜日でどこの店もシャッターを閉じている。イスラムの国では金曜日は休みの日で、日曜日は普通の日だ。

シャッターばかりの通りを散歩しても、何もおもしろいことなどなかった。宿へ帰って本でも読もうかと思った時、路肩に一台の乗用車が止まり、運転席のイラン人が下手な英語で、それもかなりの大声で話しかけてきた。

「どこの国の人ですか?」

「日本です」

男は手を差し出して握手を求めてくる、頭がだいぶ涼しくなった、体躯の大きな男だった。無下に断るのも悪く思って握手に応じると、助手席の男まで握手を求めてきた。

「どこの国の人ですか?」

「だから、日本ですって」

そこまで言うと、運転席の男は急に日本語を話し出した。

「日本人ですか、どこへ行くんですか、イランへはいつ来たの、名前は何、私は日本に7年住んでいた、カワサキ、知ってる?」

流暢な日本語だった。男が7年も日本に住んでいたというのは本当だろう。僕は男の話に、へぇへぇと適当に応えながら立ち去る機会を窺がっていた。

僕はこの長い旅で学んだ。突然話しかけてくる、日本語の上手い人間ほど怪しい奴はいない。

そこへ路線バスがやってきた。停車した男の車へ向かって、激しくクラクションを鳴らし出した。男の車が進路をふさいでいる。

「あぁ、バスが来た、まぁ乗って乗って」

男は後部座席へ乗れと僕を誘った。

突然話しかけてくる、日本語の上手い人間ほど怪しい奴はいない。

でも暇だしな、僕はドアを開けて、後部座席へ乗った。

…つづく


加倉大輔2005-06-11 Sat 13:42 TrackBack
世界一周旅行ときどき日記 記事一覧
マシュハドの名前の無い宿 怪しい男は森さんと名乗った
この記事への感想を書く
世界一周旅行ときどき日記 記事一覧
マシュハドの名前の無い宿 怪しい男は森さんと名乗った