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アフガニスタン周遊バスの旅 ~ タリバンの町 アフガニスタンの恋

アフガニスタン周遊バスの旅 ~ 地雷と竜巻と蜃気楼

The Day 935 - 2005-05-29 Sun 16:53 Herat, Afghanistan… MTV All Stars - What's Going On
前方に竜巻あり

デララムを出た時間はわからない。外はまだ暗く、僕の頭はまだ眠っていた。

悪路はどこまで行っても悪路のままだった。運転手だけが鉄人並の体力で、ひたすら運転し続けていた。煙草が眠気覚ましなのだろうか、彼の左手の指にはいつも煙草があった。運転中は大麻はやらないらしい、一応安全を考えているのだろう。しかし彼の勤務状態は労働基準法に違反している。もっとも、アフガニスタンに労働基準法があればの話だが。

夜が明けて荒野に日が昇る。長く、暑い、乾いた一日がまた始まった。昨日のこの時間も、同じバスの同じ席に座っていた。

ひび割れた道路のわきで、シャベルを掲げて奇声をあげる子供たちがいた。道路の深い溝に砂を入れて、運転しやすくしているのだ。彼らは車がやってくると、これ見よがしにシャベルを掲げて運転手におひねりを出すように催促する。誰が最初にこんな事を考えたのだろうか。車が巻き上げる砂と排気ガスにまみれて、子供たちは乾いた砂をせっせと道路まで運んでいた。

バスの運転手は心得たもので、遠くの方に子供たちを見つけると、さっと20アフガニー紙幣 (43円) を出して、一枚ずつヒラヒラと窓から投げる。

子供ではなく、大人もいる。ただし大人が掲げているのは、シャベルではなく AK47 自動小銃で、有無を言わせず車を止めては20アフガニーを徴収していた。彼らがタリバンなのだろうか。

昼を過ぎて気温が上がってくると、あちこちで竜巻が立ち上り始めた。つむじ風と呼ぶには多きすぎる。大きなものだと高さ 100m ほどありそうだし、遠くでは幅が 100m はありそうな巨大なものまであり、空を支える柱のようにも見える。竜巻と竜巻がぶつかると、それはさらに大きな竜巻へと成長した。

竜巻は突然現れては、バスの近くをかすめて行った。しかしその寿命はそう長くはなく、十分もしないうちに消えてなくなった。

荒野をラクダの親子が歩いている。その向こうの地平線に蜃気楼が現れ、山が空に浮かんで見えた。

道路わきでは金属探知機を使って地雷を探していた。プラスチックで作られた小さな対人地雷は探知機には反応しないはずなので、恐らくここに埋められているのは大型の対戦車地雷なのだろう。

休憩の時でも、道路から外れて荒野を歩いてはいけない。対戦車地雷が人間の体重で爆発するかどうかは知らないが、爆発すれば間違いなく跡形もなく吹き飛ばされ、砂埃になって終りだ。ラクダの親子は大丈夫だろうか。

アフガニスタンは荒野ばかりの国だった。緑はわずかしかなく、森どころか大きな木さえもない。砂嵐と竜巻と蜃気楼を眺めながら、僕は日本という国が、経済的にだけではなく、自然環境でも恵まれているのだと知った。

山は緑で覆われていて、水はいくらでもあり、四季があり、果物も野菜も様々な食物が育つ、温泉もあれば、周りはぜんぶ海で魚が獲れる。逆に言えば、自然環境が豊かだったからこそ、日本は経済発展を遂げられたのかもしれない。日本は類まれなる恵まれた国なのだ。

では、このアフガニスタンには何があるというのだろう。地雷原の荒野と、万年雪の峠と、反政府組織にテロ。

マザーリシャリフでの、食堂の息子の質問を思い出した。

「日本がアフガニスタンから買ってくれる物は何ですか?」

僕は返答に困った。アフガニスタンでは、天然ガス、オイル、鉄、銅、僅かばかりの天然資源を産出してはいるが、輸送が極めて困難なこの陸の孤島から買う理由がない。

バスの窓から、道路わきに建てられた看板に日の丸を見つけた。日本の援助により作られた道路だという。その道路はすでにボロボロになっていて、橋は破壊されたままだった。

アフガニスタン。この国はこの先、どうなるのだろう。自国だけで問題を解決できるほどの力はない。援助無しでは立ち行かないのは明らかだ。

二回目の夕暮れが訪れる頃、バスはようやく目的のヘラートへ到着した。僕の目的地はここだが、バスはまだまだ走って、そのまま国境を越えてイランまで行くという。僕は数日ヘラートで体を休め、バスの向かったイランを目指す。


加倉大輔2005-05-29 Sun 16:53 TrackBack
この記事の感想

 いつも楽しく拝読しています。
 長く大変な旅でしたね。お疲れ様でした。無事で何よりと、胸を撫で下ろしています。

 アフガンは、内戦で荒廃するまでは、山も見渡す限り果樹園で覆われ、緑も豊かで、恵まれた土地だと聞きました。温暖化のせいで、山脈の万年雪も融け、灌漑に必要な水も枯れたのだといいます。

 今のような姿になってしまったのは、地理的な要素のみならず、世界規模の無関心のせいかも知れませんね。元の豊かな自然を取り戻し、人々の生活に活気が戻るように、国内事情の安定を祈るばかりです。

 イランに行くツアーがあって、5月に旅行社の人に尋ねてみたけれど、政情不安の為、催行中止と言われました。ペルシャの素晴らしい遺跡等を見たかったのですが、残念です。
 代わりに(?)年末にエジプトに行くことにしました。どこかでお目にかかれるでしょうか。素敵な偶然を期待しています。

 加倉さん、この後もどうかくれぐれも気を付けて、旅を続けて下さい。お腹をこわさないようにね。
 そして、見ているだけでワクワクしてくるいつもの写真を、また見せて下さい。特に子供達の写真は大歓迎!楽しみに待っています。

butabuta2005-05-31 Tue 10:21

通過した、カンダハルで、モスクが自爆。パキスタン南部でも爆発?中近東は火薬庫ですな。トルコは安全かな。御無事を祈る。

hayashi2005-06-02 Thu 02:05

加倉さん、ご無沙汰しています。
以前、シンピンの林さんの宿でお会いしたsatoruです。お元気でらっしゃいますか?

ときどきこちらの方は拝見させてもらってます。で、昨夜テレビのニュースを見たら「カンダハルで自爆テロ」とありました。

ときどき日記を読んだところ、カンダハルはすでに抜けてらっしゃるようで安心しました。

よく「気をつけてください」って言う言葉ありますけど、そちらのそのような環境で、どう気をつけたらいいんだよ、、、って感じかもしれませんね。

こちらでは、無事に通り抜けることを祈るばかりです。

そして楽しい時間があることを。

satoru

satoru2005-06-02 Thu 14:49

わたしも「気を付けて」としか言いようがありません。
ごめんなさい。
出来ることと言えば、この平和で呑気な国から
「どうぞ無事で・・・。」と祈ることだけ。

ダイスケさんの写真に写る、
アフガニスタンの(メディアでは報道されない)日常の風景や人々が、
静かで優しげに見えれば見えるほど、
やりきれない気持ちになります。

ダイスケさんも、
この旅の途中で出会った人たちも、
ぜんぜん関係ないけど、ただ普通に慎ましく暮らしている人々も、
もう誰も傷ついたりしませんように・・・。

さちらも2005-06-03 Fri 18:45
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