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パキスタンのペシャワールから、自動小銃を携えた警察の護衛付きでアフガニスタンの国境を越えた。
最初の目的地はジャララバード。先週、キューバのグアンタナモ米軍基地で、モスリム過激派を取り調べ中に、イスラム教の聖典であるコーランを米軍がトイレに流したという噂が立った。遥か彼方キューバの噂は世界各地のモスリムを怒り狂わせ、アフガニスタンでも米軍撤退以来最大の反米デモが起こった。
ジャララバードでは暴動が起こり、アフガニスタン全土に飛び火しているという。僕がジャララバードに到着した時には、"噂" は誤報だったというニュースが流れていた。僕は宿にいる間、パソコンから流れるアメリカンソングが外に漏れないように、音量を小さくして息を潜めていた。
いつまた暴動が再開するかもしれないジャララバードを一泊で後にし、日本から来た中古のカローラに乗って、首都のカブールを目指した。
国全体が高原に位置するためか、乾燥した気候のためか、木がほとんどない。景色は去年訪れたチベット高原の景色によく似ていた、脳みそを揺さぶる道の荒れ具合もよく似ている。
荒れ果てた荒野ばかりを思い描いていた僕は、アフガニスタンは美しい国だと知った。火星のような荒涼とした景色もあれば、緑の絨毯を敷き詰めたような草原もあり、カメラを持つ手がかじかむくらい寒い万年雪の峠もあった。
カローラの窓から外を眺めていると、破壊されて道路わきに打ち捨てられ、錆びた鉄くずとなった戦車や装甲車の残骸が視界に飛び込んでくる。牛や羊が草を食む、のどかな風景の中で、鉄くずの亡霊だけが、わずか3年前に戦争をやっていた国であることを思い出させた。
首都のカブールでは、2週間ほど前にインターネットカフェで自爆テロが発生し、3人が殺されている。しかし、昼間に町を散歩し、市場を眺めて歩く分には問題なかった。人々は気さくに声をかけてくるし、警官も親切だ。ただ、夜の10時にもなれば、外を歩いている人はほとんどいない。
当然ながら、テロと暴動が頻繁に起こる国に旅行でやってくる酔狂な人間は少ないらしく、他の旅行者にはまったく出会わない。そもそもカブールにはまともなホテルは数件しなかく、そのまともなホテルはバックパッカーにはとても手が出ない値段ばかり。
僕が選んだのは、廃墟としか呼べない、名前だけは立派な Plaza Hotel だった。選んだと言うよりも、それしか選択肢がなかった。
案内されたのはツインの部屋。最後に客が泊まったのは一体いつだろう、ベッドには砂埃が積もっていた。荷物を降ろし、疲れ果てた体で最初にやらなくてはならなかった作業は、薄いマットレスと汚れたシーツを窓の外に突き出して埃を払うことだった。
部屋にはバスルームが付いていたが、鍵がかけられていて開かずの間になっていた。トイレは共同で、悪臭が廊下まで漂っている。シャワーは無い、水道も水が出ない。ドラム缶に砂の混じった濁った水が溜めてあり、それでトイレを流したり、手や顔を洗う。ここにいる限り、風呂という存在は忘れねばならない。
電気は屋上の自家発電で、夕方6時から天井の裸電球が灯り、10時半には消えてしまう。昼間にトイレに入りたい場合は、ライトを持って行かないと何も見えない。消灯後は囚人のように黙って寝る以外に無い。
この廃墟ホテルの部屋が、なんと20ドル。この値段なら、アジアのほとんどの国では、シワひとつ無い真っ白なシーツのベッドと、ホットシャワー付きの個室に泊まれる。都市は急速に復興しつつあるが、ホテルのような娯楽施設は後回しなのだろう。
汚れた窓ガラスを通して夜のカブールの町を眺めてみる。数年前にテレビで観た、対空砲の赤い閃光が間断なく夜空に昇っていく映像を思い出す。
人々がテロに怯えることなく暮らし、旅を楽しめるようになる日が、はたしてこの国にも訪れるだろうか。
アフガニスタンに入国したということでかなり度肝を抜かれ日記を読ませてもらいました。なぜならば日記にもあるように1週間ほど前に大規模な反米デモが日本のニュースでも繰り返し報道されていたからです。
加倉さんのHPをいつも拝見し、家にいながらにしてトリップさせてもらっているので、くれぐれも身辺に気をつけてくださいね!応援していますよ!
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