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インドからの脱出

The Day 897 - 2005-04-21 Thu 21:41 New Delhi, India... Elton John - Runaway Train

南インドのバンガロールから一気に北上、走行距離 2,483km、寝台ベッドで2晩を過ごし、44時間後、首都ニューデリーへ到着。

安宿の集まる駅前のニューバザールは、どうやら首都の中でも最もうるさい場所のようだ。いや、僕の今までの旅の中で、最も劣悪な環境と言っていい。人、リキシャ、ノラ犬、ノラ牛、排気ガス、ゴミ、砂埃、ハエ、猛暑、アンモニアの臭い、ひっきりなしに声をかけてくる売り子や大麻の売人、渋滞とクラクション。

宿の部屋にはゴキブリが大量に徘徊していて、たまりかねて部屋を代えてもらうと、なんとかゴキブリの数は半分ほどになった。どこの食堂も不衛生で、2日目には酷いゲリに襲われた。

ニューデリーへ来た目的はひとつ。パキスタンビザを取得して、インドを脱出するためだ。訪れた場所は少ないが、インドで四カ月を過ごした。もう一生分、いや、僕の子供と孫の分まで過ごしたに違いない、十分だろう。

次の国へ、と考え始めると、一刻も早く脱出したくなる。しかし、ニューデリーへ到着したのは運悪く週末で、大使館は開いていない。毎日が日曜日のような生活をしていると、かえって本当の日曜日が疎ましい存在になる。ATM にお金がなかったり、切符が買えない、郵便局も休み、そして問題の大使館も開いてない。

一刻も早く、という使命感と焦燥感に動かされ、ゲリを我慢しながら月曜日の朝からパキスタンビザの申請を始める。まずは日本大使館へ行って、この日本人を入国させてやってくれ、と書いた紹介状のようなレターを貰う。

それを持ってパキスタン大使館へ行き、パスポートを渡して次の日に取りに行く。夕方5時に配布のはずだったが、窓口が開いたのは5時半。なるほど、パキスタン "も" そういう国らしい。

ビザをもらったその足で駅へ直行し、翌日の国境行きの列車の切符を買った。外国人専用窓口の係りの男は愛想というものを一片も持ち合わせておらず、僕を奴隷か犬のようにあしらった。

都会の喧騒と、暑さと、ゲリと、宿のゴキブリ、僕のストレスは限界に達しつつあった。もし、僕の手の中に消音銃があったら、僕は係りの男に二、三発お見舞いしたかもしれない。

そして今夜、国境行きの列車に乗り込む。次の朝、目を覚ませばパキスタンは目前... の、はずだった。

荷物を抱えて、人ごみを掻き分け、駅へ。インドではプラットフォームから線路を覗き込んではいけない。そこは停車した列車から落とされた人糞で溢れ帰っている。万が一落ちたりしたら、僕はそのまま死んでしまいたいと願うだろう。

プラットフォームに寝転んでいるインド人たちの隙間をジグザグに歩き、少しでも綺麗な場所を見つけて、荷物を降ろす。Tシャツが汗で体に張り付いている。ペットボトルの水を勢いよく飲んだ。お湯と呼んでもいいほど暖かい。

恐る恐る線路に目をやると、子猫ほどの大きさの大量のドブネズミがうごめいていた。たくさん並んだ線路の向こうでは、大きなゴミ袋を背中に担いだ男がペットボトルを拾っていた。

時間になっても列車が来ない。売店の男に列車の名を告げると、遅れていると言う。ほら、放送を聴いてみろ。男はそう言うが、僕にはヒンディ語はわからないし、インド訛りの英語は発音が酷すぎた。

どれくらい遅れているのか売店の男に訊きなおす。僕は自分の耳を疑った、三回も訊きなおした後、気が遠くなった。

5時間45分遅れだという。

僕が生まれ育った日本という国では、5時間45分は "遅れ" とは言わない。それは、列車は "来ない" と言う。

インドに入国した四カ月前、僕はネパールとの国境で法外なバス料金を騙し取られ、そして今日、出国を望んだ僕は、人糞とドブネズミに囲まれて途方に暮れた。

加倉大輔2005-04-21 Thu 21:41 TrackBack
この記事の感想

こんなにどきどきして加倉さんのHP開いたこと無かったです。
いつもメルマガみてから「写真あるかな〜」ってHP開くんですけど、今回はないことを願って開きました。(怖いものみたさ?)

最後に念押しして言っておきます。
「あ〜写真なくてよかった!!」

匿名2005-04-22 Fri 05:22

途方にくれた大輔さん。。
無事インド脱出できたんですよね??

匿名2005-04-22 Fri 12:30

インドにハマル人と、食わず嫌いの人、ご苦労さん。パキスタンは?その次は、世界は広い、色々な国、人、「百聞は一見にしかず」か、
中国もまだほとんど旅行してなく、世界中まではとてもとても、、特別行きたいとも思わないから、もう体力も気力も不足か。以前ネパールに住み、タイ国、そして中国南部に住み着いて異国、異郷にて「日々、旅人に接して」。今日も世界一周、休学の女子大生を迎えて雑談、片や7年放浪の中年男性と有意義な体験談も。価値ある人生を。「旅」を。

hayashi2005-04-23 Sat 02:07
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