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| ネパールの急がないエクスプレス郵便 | インドへ入国いきなり騙された (後編) |
ネパールとインドの国境にある町、スノウリのネパール側で一泊し朝を迎えた。濃い霧に包まれた肌寒い空気の中、久しぶりに担ぐバックパックが重い。
国境と言っても竹の棒で区切られているだけで、手続きも通過も簡単で、荷物検査も、お決まりの、申請するものはありますか、の質問もありはしない。もしかしたら、パスポートの代わりに母子手帳でも通過できるかもしれない。
いよいよインドへやって来た。出発して2年も経ってしまったが、僕はこの旅で、この国を最も楽しみにしていた。
最初に目指すバラナシ行きのバスを探していると、ネパールを出発した時からずっと一緒だった、オーストラリア人の夫婦がレストランのテーブルに座っていた。
挨拶して近づいて行くと、そこに一緒にいたピンクのセーターを着た若いインド人が、バスのチケットはあるかと言う。無いと答えると、エクスプレスバスとローカルバスがあるが、どっちがいいかと訊いてきた。
何がどう違うのかを尋ねると、男はものすごい早口で息継ぎもせずに、エクスプレスは8時間で380ルピーでローカルバスはさらに4時間長い12時間で295ルピーででででで… もうその先は速すぎで聞き取れない、というより煩くて聞きたくない。
僕は口をパクパクさせて、こっそり男のマネをして、オーストラリア人の夫婦に視線を送ると、向こうもにやりと笑い返した。僕は喋りすぎる男が嫌いだ。
オーストラリア人の夫婦、スティーブとジェーンは、ネパールのカトマンドゥでエクスプレスのチケットを予め買っておいたという。そしてこのバーバーレストランに行くように言われ、実はそのチケットはローカルバスしか乗れないと、ピンクセーターの男に言われて口論していた最中だった。
セーターの男は、ネパールで買ったチケットは俺の問題じゃないと言い張り、ローカルバスなら乗せてやると強気だ。僕はこの手の詐欺を人に聞いていたので、決してネパールではチケットを買わなかった。
そこへ足の悪い日本人の老人が、片足を引きずりながらやってきた。手にはネパールで買ったというチケットが握られていた。
詐欺の手口も知っていて、警戒していたにもかかわらず、僕は何と浅はかだったんだろう。僕はこの男からチケットを買ってしまった。
エクスプレスのチケット代、380ルピー (950円) を払うのに、両替したばかりの500ルピー (1,250円) 紙幣を差し出した。男は紙幣を見て、偽物だと言う。ならばそこの両替所で換えたばかりだから、取り替えてもらうと告げて行こうとすると、わかったわかった俺が行ってくると言い、お釣を出そうとしない。
これも実は嘘で、紙幣を偽物だと言ってお釣を忘れさせるか、バスに乗せてそのまま行かせてしまうつもりだったらしい。僕がしつこく釣銭を返せと言うと、しぶしぶ10分後に返してきた。
次に男は両替はしないのかと訊く。バラナシの銀行は10日間のストライキ中で、すべての銀行が閉まっているという。両替はしなかったが、これも、やはり嘘だった。怪しいとは思いつつも、被害者が当の本人で、自分が騙されている時は、なかなか気付かないものらしい。
それとも僕は警戒心が足りないのだろうか。中国で散々騙されて、すっかり疑心暗鬼になり、人間不信にまでなりかけたが、2カ月近くも誠実なネパール人と接して、すっかりお人好しの日本人旅行者に戻ってしまったようだ。
スティーブとジェーン、足の悪い老人は、しぶしぶながら先に出発するローカルバスへ乗り込んだ。わずかな金を追加すればエクスプレスに乗れるが、さらに金を払わされるのがよほど悔しかったのだろう。
30分ほど経って、男の仲間が僕のバスが来たと呼びに来た。背が低く、前歯がぜんぶ虫歯の男だった。その男に付いて行くと、何と言うことだ、そのバスはどこから眺め回してもローカルバスで、呆れた事にスティーブとジェーン、そして日本人の老人がインド人に混じってそのバスに乗っているではないか。
あけましておめでとうございます。
今はインドですか?津波の被害にはあってませんか?
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