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チベット高原の雲の上を走るバスを乗り継ぎ乗り継ぎ、青海省の西寧 (シーニン) へ向うバスへ乗り込んだ。
寝台バスには2段ベッドが3列並んでいて、ベッドは救急車の担架よりも狭く寝返りも打てない。頭の部分は少し高くなっていて、その高くなった部分の内側には後ろの客の足が入る構造になっている。身長170cmの僕で限界の長さで、これ以上背が高い人は足を曲げたまま寝るしかない。
寝台バスには、窓の開かない完全な密閉状態のタイプと、普通に窓の開くタイプとがある。どっちも一長一短があるので、ここで違いを解説して中国放浪を目論むバックパッカーたちを怖気づかせるとしよう。
まず窓の開かない密閉状態のタイプだが、換気ができないのであらゆる臭いがこもる。そして恐ろしいことに、寝台バスに乗り込む際には靴を脱いでビニール袋へ入れ、狭いベッドの上だとか下だとか、そこらへんに脱いだ靴を転がしておかなければならない。
30~40人ほどの人間が靴を脱いで密室へ入りぎゅうぎゅう詰めになった上に、頭の下には他人の足があるわけだ。そして一晩とか二晩をこの状態で過ごす。
唯一の救いは窓の開かないバスは禁煙なので、タバコの煙に燻されることはない。ただし常に足の臭いを呼吸せねばならない。
窓の開くタイプならば、窓を開けてさえいれば足の臭いから逃れることができる。しかしこのタイプのバスは煙草吸い放題。そして中国人男性はほとんど全員と言っていいほど煙草を吸う、たとえ目の前で咳払いをしようが、あからさまに手で煙をはらおうがお構いなしで吸い続ける。
窓さえ開けていれば、煙草の煙も問題ない。そう思った君は、尻の青い青二才でしかない。
問題は何もバスの中だけから発生するわけではない。自分の前に寝ている客、もしくはドライバーが、そういう決まりごとでもあるかのように、10分や15分おきに唾やら痰やらを勢いよく窓の外へ吐く。そのしぶきやら、時には実弾そのものが風に煽られて窓から入ってくるのだ。
西寧へ行くバスの中、もっと恐ろしい悲劇が起こった。前にいた客が窓から首を突き出し、胃の中のものを洗いざらい吐き出した。後ろの窓はゲロで覆い尽くされ、もう外の景色さえ見えない。
もし窓を開けたままだったなら…。
さぁ、窓の開くタイプ、開かないタイプ、君ならどっちが好き?
私は寝台バスに乗った時が一番愉快で滑稽で楽しかったよ。
あれはマシなバスだったのかな?
でもあの時も加倉さん辛そうだったね。
毎回乗ってたら嫌になっちゃうか。
申し訳ないですが思い出すと笑けてきます。
そんな辛い目にあってもグングン旅を続ける加倉さんは素敵☆です。
この記事には、驚きと感動さえ、覚えました。
まるで、映画のワンシーンを見てるような、リアルな映像が、私の脳いっぱいのスクリーンにうつしだされるようでした。・・・というか、実際自分が体験してるような気分になりました。その表現力の柔軟さが本当にすばらしい!それが単に小説でなくて、加倉大輔という人間が、実際に旅で身をもって体験しているんだから、すごい!まるで知らない中国がタイムマシ^んで、リアルタイムで目に脳に映像がとびこんでくるよ。是非、本に出して欲しい!!
1995年に北京→西寧→ゴルムド→ラサ→敦煌 の旅行に行きました。ゴルムドまで3段ベットバス。ラサまでは普通の座席のバスに揺られラサに到着。日本人は漢族に似ているから、夜は外に行くなよと言われたのをよく覚えています。 なつかしい。しかしハードな旅をされたのですね。どきどきしながら読ませていただいています。
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