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奥林匹克・オリンピック 凹んだ坊さん

中国・康定の二道橋温泉視察の巻

The Day 655 - 2004-08-22 Sun 11:03 Kangding, China… 女子十二楽坊 - 康定情歌
二道橋温泉

成都から西方へ乗合自動車で十時間ほど揺られ、愛用の世界地図には載ってもいないような町、康定へと到着いたしました。別にこの町に何かしら用があるわけでも、遠い親類縁者が住んでいるわけでもございません。ただ単にチベットのラサへ向う陸路の旅路、最初の中継点というわけでございます。

海抜 2,500m、地図から省略されるような具合ですから、小さな宿場町に違いないと高を括っておりますと、着いてみて驚くばかり、そこには若者向けの小奇麗な服屋や飯屋であるとか、大小様々な宿、集合住宅なんぞが建ち並び、映画館、劇場などの娯楽施設まである始末。まったく予想外に立派な町でございました。

そして、なんとこの町の外れの二道橋なる場所に温泉があることを聞きつけ、世界一温泉好きな温泉列島から来た日本国民として、これはぜひ視察に赴かねばなりますまいと決断した次第でありました。

もちろん最初から期待などはしておりません。もともと中国では、毎日湯に浸かるなどという習慣はございませんし、風呂というものは、便所と同程度で粗末に扱われている存在なのでございます。

石鹸、タオル、着替、日本国民なら誰しも、日々何処へゆくにも鞄に忍ばせてあるであろう、お風呂用品一式を持参し、温泉へ到着いたしました。ほのかに硫黄の臭いが漂い、まさしくこれは天然温泉ではありませんか。

温泉列島より視察に参りました、と叫ばんばかりに勢い良く扉を開けて入場いたしますと、最初に目に飛び込んできたのは、温泉プールではしゃぎまわる子ども達の姿。

「プ、プール…」

場内に突っ立っている小娘に詰め寄り、それがしは温泉列島より遠路遥々旅をして参り、この宿場町へ辿り着き、旅の疲れを癒すべく、天然温泉でひとっ風呂浴びたい旨を伝えますと、小娘が言うには、別に個室が設けてあるとのこと。

部屋の広さと湯の温度によって料金が異なると説明を受け、四十度の湯を指定いたしまして、いざ風呂場へと案内されて参ります。

風呂場を一通り眺めますと、湯船の小脇に椅子が二脚置いてあるのが見受けられ、奥の部屋は何ぞやと覗き込んだところ、そこには便器がひとつ。便器を覗くと、下にはゴウゴウと轟く、水量の多い川が流れておりました。

便器の部屋は最初から無きものと思い込まねば、自分が身を清めに参ったのか、用足しに参ったのか、まるで判らぬような次第でありました。しかも便器は湯船よりも高い位置にございまして、もうこうなると、湯船が便器なのか便器が湯船なのか判断が付きません。

気分を改め、湯船に入る前に身を清めるべく辺りを窺がいますが、そこには蛇口どころか、洗面器も、湯の流れていく排水溝すらございません。

十五元の入浴料は既に支払っておりますゆえ、途方にくれながらも、ザブザブと湯の中へ身を沈めますと、とても四十度とは思えぬ、ぬるい有様。温泉列島より参った日本国民が、湯の温度を見抜けぬとでも思うのか、と憤慨するばかりではありますが、ここはひとつ異国の地ゆえ穏便に済ませようと、ぬるい湯でひたすら我慢の子でありました。

一向に温まらぬ体を擦りながら、はて、中国人は一体どこで体を洗うのであろうと疑問がよぎります。と同時に、ふと湯船の脇に捨てられた、一回分のシャンプーの空パックが目に留まりました。

「湯、湯の中か…」

もうどうにでもなれと、やけっぱちになって参りましたところで、壁にかかった注意書きに目を通します。飯を食うべからず、酒を飲むべからす、靴を履いて湯船に入るべからず…。

結局、体の温まることもなく、入浴前より不潔になった心持で温泉を後にし、雨の降る中、身も心も冷たく、宿へと戻った次第でありました。いやはや、異国の温泉とは、斯くの如く様子の異なるものでございました。


加倉大輔2004-08-22 Sun 11:03 TrackBack
この記事の感想

2010年5月31日 午前1時過ぎ F1中継を見ながら
拝ページさせていただきました。

死ぬほど笑いました。

ありがとうございました。

takataka2010-05-31 Mon 01:38
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